『ザンの日記 3日目』
…よし、今日はちゃんとついたようだな。
えー、3日目夜の報告、ってところか。
今日は色々あったな。
練習試合は壮絶な戦いの末、惜しくも負けちまった。
いやー俺もできるもんだな!あの椅子当ってりゃ勝ってたぜきっと。
次オッサンと会った時にゃ俺の方が強いんじゃねえの?
…ま、負けは負けってことで何故か明日、朝から戦闘まで下着1枚で過ごすことになっちまった。しかもいつまでか決めてねえんだぜ、これ…。
ちくしょう、勝てばルーリちゃんが脱いでたものを……死んでも死にきれねえぜ。
そんなわけでだ、至急あったかい下着用意してくれよ。
ブリーフじゃなくトランクスだぞ!ブリーフはサポーター隠せねえからな…!
んで、その次か。あの気持ちわりぃ草っぽいのとの戦いだ。
これがまた、予想以上に弱くてよ!攻撃もてんでバラバラの方向に撃ってやがんの。
心配しすぎて損したぜ。もうボッコボコにしてやった。あれなら余裕だな!
ま、俺様の実力ならこんなもんよ。次も余裕だっての!
あとは…おお、そうだそうだ、練習試合の相手、ルーリちゃんと昼から落ち合ってだな。
とりあえず敵と戦うまで一緒に動くことになったぜ!
いやー女の子とペアとか幸せすぎて死んじまうんじゃねえの?
虫とかでてきたらキャッとかよ、水浴びのための着替えとかよ、お楽しみイベント満載じゃねえか!
……ま、このテントはすっげー厳しく離されちまったがな。試合でちょっとやりすぎちまった。
明日は頑張るぜ……!
あとは、また女の子に色々作ってもらったり、気のいいにーちゃんに合成してもらったり、だった。
この島、いいやつが多いな。へへ、俺でも嬉しくなっちまったぜ。
女の子はガード甘そうだし、もちっと頑張ってやる。
明日も期待しておきな!
(そこでぷつり、と音声は途切れ。最後に伝言が入っていた)
そうそう、なんだか南海壮?って建物で共同生活するヤツ募集してるらしくてな。
ひょっとしたらそっちに行くかもしんね。いいだろ?場所は遺跡外の入り口近くだ。
物資もそっち送ってくれよな!
(再びの沈黙。これで3日目の報告は終了、らしい)
―プロローグ1 ―
それは今年の夏のこと。
眩しい太陽。輝く波間。白波がぶつかり、沸き立ちては消えてゆく。
黄色い歓声、色とりどりの水着。なまめかしい肌。
男2人は涎をふきつつ海辺を見つめていた。
「うっひょー!す、すげえ、胸ぷるんぷるん揺れて…やがる……!」
男が叫ぶ。腹のでぱったぽっちゃり体型の男。デブ、と言ってもいいだろう。
「言ったろ? 手伝ったらいいもん見れるぜ、って」
隣にたつ紫の水着が印象的な男。全身引き締まった身体、あちこちに傷がある。
2人とも双眼鏡を目にあてていた。どう見ても不逞の輩である。
「こ、これはすげえ、なんだこの、パラダイス…!」
デブの方が歓声をあげる。ビーチの美女を存分に堪能しているようだ。
確かにこの島は、他と比べてスタイルの水準が素晴らしく高い。
夏はまさに男達にとって楽園と言えた。
「さ、仕事だ。きっちりやれよ、終わったら絶好の場所つれてってやるからな。」
ニヤリと笑う痩せた男。余裕である。
「お、おう。花火打ち上げだったよな?」
「ああ。あとサポーターはきっちりつけておけよ、笑われるぜ?」
「! わ、忘れないようにするぜ」
いつしか腰をかがめていたデブ。
もう1人は準備バッチリらしく堂々としている。
「クロフィールド工務店印のサポーター」のおかげ、らしい。
やがて姿は海の家へと消えてゆき――